
――もし1週間、あるいは1カ月というスパンで近藤選手の臨時コーチをするとしたら、どんな練習を課しますか?
高阪 それをするならば、まずはひとつひとつの場面で近藤君の何がいいのかを拾い出す。それを本人には伝えないようにして、ヒントをいっぱいあげる。そうしたらヒントに基づいて、「あのオッサン(高阪)の言ったことはこういうことだな」というのが次第にわかるようになる。答えは自分で見つけた方がいい。教えたらダメ。自分で見つけるからこそ、真の力になっていくんだと思う。
――そういえば、昨年ニュージャージーに遠征した直後に取材した時、「今度機会があったら、アメリカに住んでみたい」くらいのことを言っていたじゃないですか。あの時の気持ちはまだ変わっていない?
近藤 (微笑)? でも住んでみたい気持ちはありますね。
高阪 なんでそう思ったの?
近藤 何でしょう? 国そのものがでかいからかな? ずっと住みたいわけじゃない。2カ月とか期間を決めて、ホームステイとかじゃなく、どこかを借りて住めたらいいというのはありますね。
高阪 練習しながら?
近藤 練習は別にしなくてもいいです(苦笑)。
――この間、よくアメリカで練習している長南亮選手と喋っていたら、「向こうの練習も弱肉強食。練習そのものがピリピリしている」と言っていました。
高阪 アメリカに住んでわかったことは、こっちが何もしないでいると、どんどん丸裸にされてしまう。自分からどんどん進んで何かをしていかないといけない国だなと思いましたね。自分がUFCに出ていた時、対戦相手は、キモ、ピート・ウィリアムス、バス・ルッテン、ティム・レイシック。結構頑張っていたはずなんですよ(微笑)。それでも、そんなに受けていないというか、アメリカの中で今ひとつファンの心を掴めていない感があった。その温度差を埋めるために、レイシック戦の前にはちゃんと試合前の事前インタビューを英語で受け答えしたんですよ。それまでは英語が喋れないからという理由でインタビューをパスしたり、「いい試合になればいい」くらいのことしか言っていなかった。でも結局それだったら、ダメなんですよ。試合はもちろんそうなんだけど、自ら前に出て発言しないと認めてもらえない。そういう国なんですよ、アメリカは。最初は「試合だけをちゃんとやっておけばいいや」という考えだったけど、それだけだとやっぱり弱い。それをレイシック戦の前になんとなく感じたので、「もしチャンスがあれば、タイトルマッチをやってみたい」と英語で言ってみた。
近藤 はぁ〜(感嘆のため息)。
高阪 そこで、ようやく認めてもらえたような気がしますね。試合や練習で前向きにやるのは、ハッキリいって当たり前。もし、そこに自信があるのであれば、自分の周囲に対してそれ相応の対応をしたら、自分自身を一層強くアピールできる。
近藤 だったら、これから僕は英語を勉強しなきゃいけないですね。
高阪 俺もそれで英語を勉強しなきゃと思って、ジオスに行ったよ。でも行ってみたら、ジムで話していることと全く一緒だったから、2回通っただけで辞めた。やっぱり会話だよね。
近藤 昔は道場に留学生がいた時期もあったけど、あんまり僕はコミュニケーションをとらなかった。去年の11月くらいにジョシュのところに行ったんですよ。
高阪 あっ、LAのエリック・パーソンのところだ(※シアトル在住のジョシュはよくこのジムで泊まり込みで練習している)。
近藤 そうです。その時は笑顔で接していたら、何とかなりました。
高阪 向こうに住んで何かを自分でやろうとしかたら、自然と英語は覚えるようになる。ただ住んでいるだけでいいやと思っていたらそういうふうにはならない。自分の場合、自分から踏み込んで何かしなきゃいけないと思ったら、自然は喋れるようになりましたよ。だって話せないと、前に進まないもの。自分はアメリカに行って、生きることに真面目になったと思いますね。だって、そうしないと生き残れない。それは強烈に感じました。
近藤 今まで海外遠征に行く時にはパンクラスのスタッフが何かと世話を焼いてくれたから、そういう心配をしたことはなかった。
――だったら今度は単身でどうですか?
近藤 自分もそろそろパンクラスを・・・
高阪 俺、発言を差し控えておく(笑)。
――冗談はさておき、単身に海外修行の成果はひじょうに大きいと思います。
近藤 ジョシュのところには、また行きたいですね。
高阪 でもシアトルに行くんだったら、今はやめておいた方がいい。1週間のうち7日間は曇りだからさ。本当に気分が滅入ってくるよ。5月くらいから、だんだん晴れてくるのかな? まあ、練習するのは室内だから、そんなに関係ないけどね。
近藤 今でもたまに行かれるんですか?
高阪 たまにね。で、行った時には旧友にあったりするんだけど、2年ぶりに会う奴だったら、「相変わらずあそこのジムで練習しているんだろ?」くらいのことを平気で言われる。あそこは時間が止まっているんだよね(微笑)。
【取材日/3月某日】
■こんどう ゆうき
本名・近藤有(たもつ)。75年7月17日、新潟県長岡市出身。32歳。身長180センチ。少林寺拳法二段。第3第ライトヘビー級キング・オブ・パンクラシスト。第5&8代無差別級キング・オブ・パンクラシスト。5.18『戦極 第二陣』でホジャー・グレイシーと対戦するも、チョークスリーパーで一本負け。
■こうさか つよし
70年3月6日、滋賀県草津市出身。37歳。身長181センチ。柔道四段。初代スーパーヘビー級キング・オブ・パンクラシスト。06年5月のマーク・ハント戦を最後に引退。現在はTEAM ALLIANCEを主宰。後進の育成に力を注ぐ。わかりやすいテレビの解説も好評。
■ほたか さちこ
岐阜県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業後、フリーカメラマンとして活動を始める。格闘技雑誌を中心にリングサイドやポートレートを撮影。スポーツに限らずさまざまなフィールドでも幅広く活動している。ライフワークとするレスリング競技では海外での大会を熱心に追い続け、08年北京五輪ではFILA国際レスリング連盟のオフィシャルカメラマンに世界で唯一認定されている。
