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山田隆道のにわかでゴメンよ!

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第24回「格闘家とおバカ」

僕の高校は私立だったのだが、私立ならではの珍しい授業があった。
それは剣道である。体育ではなく剣道。
どういう理由かはいまいちわからないのだが、とにかく剣道の授業が週に二回は必ずあって、それが必須だったのだ。従って生徒全員が入学と同時になぜか剣道着を買わされ、竹刀など一式を所有していたわけだ。しかも年に一回剣道大会まである始末。つくづく意味がわからない。一体なぜそこまで剣道にこだわっているのだろうか。

もちろん僕は剣道の授業がめちゃくちゃ嫌いだった。
なにしろ竹刀でどつかれるのは理屈抜きで痛い。おまけに夏は剣道着が暑くて全身汗臭くなるし、冬は冬で寒くてかじかんでいる指先に小手なんか強く打たれると、のた打ち回るほど激痛が走る。暑い、臭い、気持ち悪い、寒い、痛い。人間の負の感情が幕の内弁当みたいにまとまって襲ってくるわけだ。

さらに、それ以上に嫌だったのが剣道のD先生の怖さである。
D先生は高校でも超有名なコワモテ体育教師。とにかくわけがわからない言動で僕らをことごとく戸惑わせ、時に恐怖のどん底に突き落すのだ。大体、何かの書類の職業欄にD先生は「剣士」って書いたぐらいである。しかも、趣味が詩吟。おまけに色黒マッチョなのだ。
ほーら、なんだかめちゃくちゃ怖そうでしょ? 
修羅なのよ、修羅。
剣道の授業なのに開始15分くらいは詩吟をやらされるんだよ? 
かなり自己満足の授業内容だったと思うけど、誰も反論できないぐらいのオーラをまとっているわけよ。

ちなみにD先生は怖いだけじゃなく、数々のおバカ発言もこれでもかってぐらいかましてくれるため、僕らはどんなリアクションをして良いのかわからなかった。
「そんなことで人が斬れるか!!」
これは僕が剣道の素振りをしていた時にD先生に怒られた言葉である。完全にどこかの世界にいっちゃってる人の発言だ。僕は「はい」って頷くしかなかったけど、当然頭の中は「?マーク」でいっぱいだったわけだ。

他にもD先生はわけのわからない言葉で僕らを注意しまくった。
「こら! そこの青い白線を踏むな!!」
白線は白である。
「壁で黒板を叩くな!!」
物理的に無理である。
「(ランニングのとき)ゴールまで距離にして20分だ! 急げ!」
時間が決まっているなら急ぎようがない。
ぶっちゃけ笑いそうになったものだ。

さらにD先生は武道家にありがちな訓示的なものもお好みで、よく僕らに自分が感銘を受けた本の話や諺の類を説いてくれた。
「こないだ本を読んだ。あの有名な『走れ!ゴメス』を!」
メロスである。
「お前ら、この諺を知ってるか? 犬も歩けば棒に刺さる!!」
刺さったら犬が死んでしまう。
「(指を五本立てて)お前らに言いたいことが三つある!!」
いやはや、とんでもない教師である。
単純な言い間違いもあるのだろうけど、今考えるとやっぱりただのおバカさんだったんじゃないかと思えてくる。しかし、見た目が超怖いから誰も突っ込めなかったのも事実だ。ゆえにD先生はきっといまだに自分の間違いに気づかず、おバカな言葉を堂々と吐いているのだろう。

そんなことを考えていると、僕は無性に「格闘家やプロレスラーなど、いわゆるイカツイマッチョ男性にはおバカさんが多いんじゃないか?」という、またも失礼すぎて関係諸氏にボコボコにされそうな仮説を主張したくなる。

なぜなら格闘家の男性は子供の頃から喧嘩が強かった率が高いからだ。
さあ、みんな、子供の頃を思い出してみよう!
あの頃、喧嘩が強かった奴って例えバカなことを口走っても誰にも突っ込まれなかったじゃないか。おバカ発言がきっかけで笑い者にされるなんて経験はコワモテ不良男子には絶対になかったはずだ。

僕は喧嘩が弱かったからよくわかる。
なぜなら僕みたいなヘタレ男子はイカツイ男を目の前にしたとき、何にも心当たりがないにも関わらず、真っ先にこんなことを考えるのだ。
「この人を怒らせないようにしよう」
だって下手に刺激して暴力でも振るわれたらたまったもんじゃないもん!
例えどんなに間違ったことを言おうが、わざわざ波風立てて怒らせたくないから「そうだよねえ。君の言う通りだよね」ってスルーするのがヘタレ界の鉄則なのだ。

だから腕自慢の不良たちは自分の間違いに気づくことが少ないと僕は勝手に結論づけている。正直、佐山サトルが「暴走族を撃ち殺せ!」って言っても僕は反論できないもん。殴られるリスクがあるぐらいなら、いちいち目くじらなんか立てたくない。しかし、もしも同じことをMr.オクレが言ったら1時間以上バッシングするだろう。
何はともあれD先生もそういう理屈だと思う。子供の頃から喧嘩が強くて怖い人だったのだろう。だから誰にも間違いを指摘されることなく大人になったのだ。(多分)

<山田隆道の近況>
◇11月12日より雑誌「ベースボールタイムズ」にて山田隆道著作の連載小説『赤ラークとダルマのウィスキー』がスタートしました。野球をテーマにした小説で、題字をプロ野球ニュースのキャスターとして著名な佐々木信也さんに書いていただきました。隔週水曜日発売です。宜しくお願いします。

◇12月10日に山田隆道著作の「芸能界超ウルトラおバカ名鑑」という単行本がぶんか社さんより発売されます。芸能人のおバカ伝説を愛情たっぷりにいじり倒し、尚且つおバカにまつわるエッセイが数本収められています。宜しくお願いします。

◇詳しくはオフィシャルブログで!
http://blog.livedoor.jp/aoi_yamataka/






次回更新は、11月21日(金)です!お楽しみに!!

PROFILE

山田隆道(やまだ たかみち)



ちょっと格闘技が好きな漫画原作家。
そこまでマニアではないと言いつつも、渡辺啓とのユニット「あおい」として 女子総合格闘技をテーマにした漫画「彼女色の彼女」(幻冬舎)を発表。
他の主な漫画作品に「リサーチャー」「借金カノジョ」(いずれも幻冬舎)がある。
また、様々な雑誌で連載コラムも多数抱えており、シレっと格闘技について語ったりしている。

詳しい情報や近況は
オフィシャルブログで!




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