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山田隆道のにわかでゴメンよ!

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第23回「格闘技と体臭」

  基本的に僕は痛いのが苦手だ。従って格闘家の気持ちがまったくわからない。
 「高山VSドン・フライ」なんて僕に言わせれば「痛そう」以外の何者でもなく、一体どんな性癖をしてるんだって感じである。もしかしてそっち系のマニアなんだろうか。殴られるほどに快感を覚えていくファイティングハイみたいな領域があるのだろうか。
  さらに2005年大晦日の『Dynamite!!』で曙と総合ルールで対戦したボビー・オロゴンが試合後のインタビューで「寝技になったときの曙の体臭がすげえの! 超くせえから失神しそうになっちまったよ!」と語っていたのを思い出した。
 そうか、格闘技って痛みに加え臭いもあるのか!
  考えてみれば確かにそうだ。人間本来の獣臭と運動時の汗臭さ、ベテラン選手の場合は加齢臭もある。しかも裸で全身密着するし、息切れで「ハアハア」したら口臭もすごいだろう。寝技なんか脇や股間といった最も臭いのペーハーが高い部分に鼻が密着することもあるだろうし、両脇に特殊な爆弾をお持ちの方がいらっしゃったら生き地獄になることは間違いない。うへぇ、相当臭そうだ。食事中の方がいたらすいません。
 かくいう僕も学生時代はバスケットボール部だったのだが、この体臭という奴にかなり苦労した覚えがある。
  そもそも中高生にとって運動部と不潔は密接な関係にある。どこも部室はめちゃくちゃ汚いと相場が決まっているし、シューズはもちろん練習着などもそんなに頻繁に洗濯しないところが健全な青少年たるゆえんである。運動部は不潔でしかるべきなのだ。
 だからして運動部と体臭の激しさもまた密接な関係になってくる。不衛生に加え、青少年特有の生命活動による肉体臭。さらに部員の中に一人ぐらいは生まれつき異臭のポテンシャルが高い殿方(主に脇)がいるものであり、そんな天性の異臭王子の出現によって「運動部+不潔=異臭」という永久不変の定理原則は証明されることになっている。
  我がバスケ部にも王子はいた。両脇から強烈な臭い球を乱射するF先輩である。
 F先輩は身長183cmでなかなかのイケメン。性格も優しく頼りがいもあったのだが、いかんせん体臭だけで指名手配されるんじゃないかと思うほど脇が臭かったのだ。
  バスケのゴール下の攻防はまさに格闘技である。ポジション取りをはじめ激しい肉体接触が当たり前であり、当然F先輩もプレー中はとってもバイオレンス!
 しかし、我がバスケ部ではF先輩がゴール下に突っ込んでくると、まるでモーゼの十戒のように敵が道を開けるという暗黙のルールがあった。近寄ると臭かったからだ。
こうしてF先輩は異臭爆弾を武器にゴール下の点取り屋となり、ディフェンス時もゴール下に立っているだけで敵があまり攻撃できないというバスケ本来の競技性とはまったく異質の方向でプレーヤーとしての成長を遂げていった。
  きっと敵校の監督などはミーティング時に相当手を焼いたことだろう。
 「お前ら、なぜ奴を避ける!? たった一人に点を取られまくって恥ずかしくないのか!?」
  「しかし監督、奴はあまりに破壊力のある武器を持ってまして……」
 「なに、臭い!? ふむふむ……困ったな、これじゃ試合にならないじゃないか!」

  わっはっは、参ったか! F先輩はすげえだろ! これだけでレギュラーなんだぞ!
 えっ、不謹慎って? どうも失礼しました。
  しかし、体臭がアスリートのパフォーマンスに少なからず影響を与えることは間違いない。「ボビーVS曙」がそうであったように格闘技でも異臭は効果的なのだ。(多分)
従って選手は試合が決まったら、その日から「風呂に入らない」という逆衛生管理を徹底してみたらどうか。1ヶ月前に試合が決まったとしたら、1ヶ月間練習で汗をかきまくるにも関わらず一切風呂に入らない、エイトフォーもしない。濡れタオルで汚れを拭くのも御法度にしてみるわけだ。……うげげ、想像しただけでかなり強烈だ。
 きっと対戦相手に与える影響は計り知れないだろう。
なにしろ生命体から自ずと発せられる1ヶ月分の老廃物に加え、塵や埃、細菌など外部から吸収された様々な汚物がまるまるすっぽり格闘家の肉体を包むのである。そりゃ、もう皮膚の表面なんて「ミックスド汚物」がペースト状になっているはずだ。
  魔王なんか目じゃないっすよ、あんた。ルールを侵すことなく正々堂々とヌルヌルしちゃうんだから間接なんか取れるわきゃないじゃないっすか。(あくまでも冗談です)
さらに異臭もハンパじゃない。歓楽街のゴミ捨て場以上のスメルがリングのみならず会場中に充満する。1年間食べないまま放置した弁当箱を1万人の観客が一斉に開けちゃったかのような地獄絵図である。
 もちろん口臭もすごいことになっているため、対戦相手は自ずと接近戦を裂ける。組技なんかもってのほかだ。組んだ瞬間、対戦相手は漏れなく狂気の世界にいざなわれ、気づいたらアッパラパーになってしまうわけだ。(冗談です、冗談)
  そして異臭作戦がエスカレートしていくと、中には「闘わずして勝つ」という宮本武蔵みたいな領域を極めた格闘家まで現れる。敵前逃亡と不戦勝の続出し、ついには公式ルールに「お風呂に入りなさい!」という子供みたいな条文が追加されるのだ。
 いやあ、恐ろしい。選手や関係者にボコボコにされそうだ。(ごめんなさい!)
  とはいえ、近年の国民皆清潔化が日本人を弱体化させたという道理はあるわけだ。
 男子がやたらと清潔にこだわるようになり、朝シャンに始まり、アブラ取り紙や制汗剤などを当たり前のように使う時代になって、どんどん日本男児は弱体化していった。
もしかすると昔の日本男児がたくましかったのは不潔だったからではないか。野生動物が強いのは不潔だからではないか。不潔は強さの源なのかもしれませぬ。
  所英男がいまいち伸び悩んでいるのは「風呂なしアパート」からマンションに引っ越したからなのだ。(多分)






次回更新は、11月14日(金)です!お楽しみに!!

PROFILE

山田隆道(やまだ たかみち)



ちょっと格闘技が好きな漫画原作家。
そこまでマニアではないと言いつつも、渡辺啓とのユニット「あおい」として 女子総合格闘技をテーマにした漫画「彼女色の彼女」(幻冬舎)を発表。
他の主な漫画作品に「リサーチャー」「借金カノジョ」(いずれも幻冬舎)がある。
また、様々な雑誌で連載コラムも多数抱えており、シレっと格闘技について語ったりしている。

詳しい情報や近況は
オフィシャルブログで!




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