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山田隆道のにわかでゴメンよ!

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第21回「格闘家がモテる理由」

  格闘家は女にモテるはずだ。理由は簡単。他の動物を見渡してみてもメスは強いオスに本能的に惹かれる傾向にあるし、単純に闘う男ってカッコいいからだ。
 しかも、それでいて格闘家にはキャバクラで女の子の注目を独り占めできる強烈なアピールポイントがある。それは耳にできた餃子みたいなタコである。
  格闘家の耳を見ていると、みんな揃いも揃って耳に巨大なタコができている。あれは耳の毛細血管が練習や試合の衝撃で切れてしまい、たまった血が固まってしまったことからできるタコらしいのだが、僕はあの腫れあがった耳を見ていると何となく「あんな耳になるほど過酷な競技なんだ。すげえなあ」という感心してしまう。特に石田光洋選手の耳なんか大変なことになっている。「あなた、それ聞こえるんですか?」って思うぐらい耳全体がサザエの下の方みたいになっているのだ。
 「ちょっとお兄さん、その耳どうしたの~?すごくなぁい?」
  溝ノ口のキャバクラでユリ(便宜上名づけた)が客の耳を見て甲高い声をあげる。
 「自分、格闘技やってるから、練習とか試合でこうなっちゃうんだよ」
  客はさりげなく自分が格闘家であることを告白し、ユリの関心を一気に誘う。
 「嘘、マジで!格闘技!?チョーすごい!!」
  「まあ、耳がこんなになっちゃうぐらいだから、体への代償は大きいけどね」
 「そうなんだあ。格闘家さんって大変なんだね」
  「それでも自分の好きなことやれてるんだから幸せだよ」
 「すごぉぉい!ユリ、そういう生き方マジあついって思うよ!」
  というわけで、この後ものの数分で格闘家は「今度の試合、観に来てよ」とユリを誘うことに成功する。格闘家の耳ダコはわけわかんない格闘技素人のお姉ちゃんがいとも簡単にSRSチケットを手に入れることができる、末恐ろしいボディパーツなのだ。格闘技会場にキャバ嬢風の女が多数出没する理由はこういうところにあると思う。

 さらに格闘家には拳ダコというもう一つの武器もある。打撃の練習によって拳が鉄板みたいに硬くなるあれだ。僕みたいな文科系人間から見ればあれは相当カッコいい。いかにも「自分、喧嘩強いっす」って感じがする。
  僕も中学生の頃、チンコの毛が生え始めたのと同時に突然、拳の強化に勤しんだことがある。少年にとって陰毛の芽生えと強さへの憧れは密接な関係にある。当時の僕は拳にタコを作れば喧嘩が強くなるはずだと信じ、家の壁に素手でパンチを百発打ち込むという苦行を三日間繰り返し、見事に三日目でやめた。痛かったからだ。

 そんなことはどうでもいいのだが、とにかく格闘家には耳ダコや拳ダコなど女の子が思わず「すごぉい!」と黄色い声をあげてしまう職業病的ボディパーツがある。それでいて怪我や生傷も多く、これまた女の子にとってはかなりのポイントアップだ。
  そもそも日本人はスポーツ選手がより大きな怪我や傷を抱えているほうが感情移入できる傾向にある。「怪我を克服」とか「怪我との闘い」なんてドラマがあればあるほど僕らはその選手を尊敬の眼差しで見てしまうし、学生時代も運動部の奴が「膝を痛めた」とか「肩を故障した」などと怪我話をしているのを聞くたびに、なぜか「かっこいい」と思ったものだ。骨折して三角巾なんかしてたら最高だし、野球部のエースが肘の遊離軟骨を除去する手術を受けたなんて聞いたら、そいつはたちまちヒーローになる。
 「ゆ、遊離軟骨、大丈夫なん?」
  「肘にメスを入れるのは怖かったけど、でも今やらないと前に進めないから」
  「かっこいい!!」
 遊離軟骨。それがどんな骨なのか皆目見当もつかないが、何ともカッコいい響きだ。

  しかし、そういった「職業病的な体への代償」は我々のような執筆業者になってくると途端に女の子に情けない印象を与えてしまう。
 腰痛に肩凝り、眼精疲労だからだ。
  「お客さん、なんか目が充血してない?」
 溝ノ口のキャバクラでユリは僕を見るなり、そう尋ねてきた。
  「ちょっと徹夜仕事が重なって、体がボロボロなんだよ」
  「へえ、大変だね。他はどこが悪いの?」
 「腰が痛いのと肩が凝ってるのと、あと長時間座り続けてるからケツが痛いんだよ」
  その後、僕は四日ぐらい着ているシャツがヤニ臭いことをユリに指摘され、いたたまれなくなって店を後にした。
 次に向かったのは、ホステスが皆優しいフィリピンパブだった。





次回更新は、10月31日(金)です!お楽しみに!!

PROFILE

山田隆道(やまだ たかみち)



ちょっと格闘技が好きな漫画原作家。
そこまでマニアではないと言いつつも、渡辺啓とのユニット「あおい」として 女子総合格闘技をテーマにした漫画「彼女色の彼女」(幻冬舎)を発表。
他の主な漫画作品に「リサーチャー」「借金カノジョ」(いずれも幻冬舎)がある。
また、様々な雑誌で連載コラムも多数抱えており、シレっと格闘技について語ったりしている。

詳しい情報や近況は
オフィシャルブログで!




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