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山田隆道のにわかでゴメンよ!

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第22回「格闘技とPK戦」

  スポーツ観戦は全般的に好きなのだが、どうもサッカーだけはいまだに馴染めない。
 『キャプテン翼』が大流行した時代に少年期を過ごしているため、子供の頃はそれなりにサッカーで遊んだりはしていたのだが、Jリーグが開幕してテレビでサッカーを当たり前のように観戦できる時代になると、途端にサッカー観戦に興味が沸かなくなったのだ。
  最大の理由は『キャプテン翼』にあると思う。僕が子供の頃は野球や相撲、プロレスと違い、一流のサッカー選手のプレイをテレビで観る機会がなかった。だから、当時の僕にとってサッカーのイメージは『キャプテン翼』でしかなく、現実と虚構の区別もろくについていないガキだったこともあり、サッカーのオーバーヘッドキックはめちゃくちゃ大空高く飛ぶものだと思っていたし、ゴールキーパーは横っ飛びでボールをキャッチするものだと思い込んでいた。大空翼や日向小次郎、若林源三らのド派手なプレイこそが本物のサッカーだと完全に刷り込まれてしまっていたのだ。
 しかし、Jリーグで初めて観た本物のサッカーはどうだ。オーバーヘッドキックなんて実際はめちゃくちゃ高度が低いし、滞空時間も短いじゃないですか、あなた。ゴールキーパーもほとんどパンチングとかだし、そもそも普通のシュートだってゴール前でもつれにもつれてチョコンと蹴ったやつが入っちゃったっていうのがほとんどじゃん。シュートってペナルティエリアの外から豪快に放つもんじゃなかったの!? イメージより劣るっていうか、意外に拍子抜けだなあ!(サッカーフリークの皆様、ほんとごめんなさい!)
  実際は野球やプロレスだって、漫画に比べれば現実の方が遥かにスケールが小さくなっているのだが、そこは物心ついた頃から普通にテレビで観戦できたスポーツのため最初から誇大なイメージを抱くこともなく、サッカーのような落胆はなかった。高橋陽一の最大の功績にして唯一の失敗は、日本にサッカーが定着する前にサッカー漫画をブレイクさせたことだ。『キャプテン翼』がなければ僕はサッカーへのハードルを勝手にあげることもなかっただろうし、Jリーグにはまっていったかもしれないのだ。

  しかし、そんなサッカーで唯一好きなシーンがある。それはPK戦だ。
 考えてみればこれってサッカーならではのめちゃくちゃ画期的なシステムなんじゃないか。だって前後半合わせて90分に加え、延長をも戦い抜いた両チームがドローに終わったからといってPKという「まったく別のルール」で勝敗を決めるんだよ? 今までの流れは一切無視である。「はい、こっからは別の競技ですよ~。ちゃんと勝敗は決めなきゃダメですからねえ~」ってな感じで、かなり強引な賽を投げられている気がするのだ。
  ただ、だからこそドラマが生まれるというのもある。強引で不条理なシステムだからこそ、PKは時に切なく時に残酷で、観る者の心を打つのだろう。

 では、ドローの場合は判定決着というシステムが当たり前になっている格闘技にもPK戦の要素を持ち込んだらどうなるのか? 例えばいまだ記憶に新しいK1MAXでの魔娑斗VS佐藤嘉洋戦。僅差の判定が様々な物議を醸したが、あれが判定ではなくパンチングマシーン対決だったらちょっと面白いことになっていたはずだ。
  「おーっと、両者フルラウンド戦い抜いて決着つかず!勝負はパンチングマシーン対決に移ります。佐藤、魔娑斗の順番で5本勝負だああああ!!」
 そして、リング中央に速やかにゲーセンでお馴染みのパンチングマシーンが運び込まれる。なお、このマシーンはセガやタイトーなど各メーカーとの熾烈な営業合戦を勝ち抜いたコナミによる提供である。(もちろん広告料も主催者がいただく)
 「まずは佐藤から!おーっと200キロを超えたあ!これはなかなかの記録です!!」
  佐藤は勝ち誇った笑みを浮かべ、魔娑斗を挑発する。興奮した魔娑斗は見るからに力みまくった様子で、高らかに300キロ超えを宣言する。
 「続いては魔娑斗のパンチです!さあ、思いっきりいったああ!!おーっと……えっ、80キロ!?女子大生並みの記録だああ!!意外に魔娑斗はパンチングマシーンのコツがつかめていません!!矢沢心のほうが記録出すんじゃないでしょうか!?」
  こうして厳正なるパンチングマシーン対決の結果、ストレートで佐藤嘉洋が勝利し、見事決勝に駒を進める。疑惑が起きる隙など一切なく、めでたし、めでたしだ。
 ……うん、間違いなく日本武道館で大暴動が勃発し、関係者の一人ぐらいは東京湾に浮かんじゃうな。やっぱ無理があったか。(当たり前!)
  でも、冗談と妄想ばっか書いてるエッセイってことに免じて、不謹慎を承知の上でちょびっと想像だけしてみてください。リングでパンチングマシーン対決をするシュルトとバンナ。練習の後、パンチングマシーン対決に備えてゲーセンに繰り出す武蔵100円玉を握り締めながら子供たちに交じって順番待ちをしている小比類巻
 ……かなり見ものである。






次回更新は、11月7日(金)です!お楽しみに!!

PROFILE

山田隆道(やまだ たかみち)



ちょっと格闘技が好きな漫画原作家。
そこまでマニアではないと言いつつも、渡辺啓とのユニット「あおい」として 女子総合格闘技をテーマにした漫画「彼女色の彼女」(幻冬舎)を発表。
他の主な漫画作品に「リサーチャー」「借金カノジョ」(いずれも幻冬舎)がある。
また、様々な雑誌で連載コラムも多数抱えており、シレっと格闘技について語ったりしている。

詳しい情報や近況は
オフィシャルブログで!




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