藪下めぐみ選手とは公私共に仲が良い。
藪下選手といえば柔道一家で育ち、柔道の名門・ミキハウスに進んだ柔道エリート。福岡国際でも3位に入賞し、あの谷亮子らとともに女子柔道の全日本代表にも選ばれた世界的柔道家である。その後、プロレスラーに転向し、総合格闘技にも進出。日本の女子総合の草分け的存在として2000年のReMix準優勝や初代SMACKGIRL無差別級王者など数々の栄冠も獲得し、36歳になった今もまだ現役を続けている。(いい加減、やめな!)
藪下選手と知り合ったのは6年ぐらい前。当然、彼女の活躍はその前からよく知っていたので、初めてお会いしたときは少し緊張して堅苦しい喋り方をしたのを覚えている。
しかし、それが今じゃすっかり打ち解け、プライベートでも御飯を食べたり、僕の方が年下にもかかわらず、親しみを込めて藪ちゃんと呼べる仲にまでなった。藪ちゃんも事あるごとに相談の電話をくれたり、僕の仕事を手伝ってくれたり、何ともフレンドリーな関係。あの柔道全日本代表の藪下だと思うと、つくづく人の縁って不思議なもんである。
そんな藪ちゃんは僕にとって「格闘家ってすげえ!根本的に体の作りが違う!」と痛感させられた選手の一人だ。何がすごいって、このオバちゃんはとにかく怪我に強い。普段から痛いだの、痒いだの言ってるところを見たことがないし、少々の骨折ぐらいでは平気な顔して動き回っている。
中でも強烈に覚えているのは2004年12月に行われたWorldReMix。初代SMACKGIRL無差別級王者を決める1dayトーナメントに参戦した藪ちゃんは決勝でエリン・トーヒルの肘打ちを脊髄部分に食らい、反則勝ちで優勝。しかし、その後、病院に搬送された藪ちゃんは検査の結果、背骨の周囲の骨(正式名称は本人も覚えてないんだって)が何本か折れていたことが発覚し、しばらくの安静を強いられた。
そして、それから二週間後のことである。僕は藪ちゃんが当時所属していた道場に怪我の見舞いも兼ねて遊びに行ったのだが、そこでいつものように元気に動き回っている藪ちゃんを発見! しかも、練習生を相手に普通にスパーしてる!!
えっ、この人、骨折したんじゃないの!? ってか、詳しくないけど、背骨の周囲って結構やばそうな印象するよ? まだ二週間しか経ってないし、普通だったら歩ける状態じゃない、ましてやスパーなんかできる状態じゃないと思うんだけど……。
僕は当然の如く、藪ちゃんに聞いた。
「ねえねえ、骨折したんじゃないの? もうくっついたの?」
すると、藪ちゃんはいつものヘラヘラした口調で元気に返事。
「もうくっつかないんだって!」
「はあ!? くっつかないって骨がってこと!?」
「そう、ずっと折れたままってこと。でも、動けるからいいかなって」
僕は言葉を失った。それをよそに藪ちゃんは再び元気に側転。しかも、プロレスの後ろ受身とかドロップキックみたいなハードなことまでやってる。一体なんなんだ、このオバちゃんは!? 骨ってそんなに緩い感じなのか!?
さらに聞いた情報によると、検査の時、試合で肘打ちを食らった箇所以外のところも何本か骨折していたみたいで、ドクターによると「随分前に別の試合で折れてるはず」とのこと。つまり、あのトーヒル戦、いや、あのトーナメント自体、藪ちゃんは数箇所骨折した状態で出場していたというわけ。まあ、本人は気づいてなかったらしいけど……。
さらに2006年8月にアメリカで行われた『RING OF COMBAT』でローラ・ディオーガスト戦では右腕をぽっきり骨折した藪ちゃん。帰国後、一週間ぐらいして藪ちゃんに会ったのだが、その時はさすがに痛々しい包帯を右腕に巻いており、僕も大いに心配した。
しかし、僕とのお喋りに花が咲き始めると、このオバちゃんは段々身振り手振りを加えだし、挙句の果てには完全に右腕を動かしまくる始末!
「み、右腕大丈夫なの? 折れてるんじゃないの?」
不思議がる僕に藪ちゃんはいつもの子豚顔でこう言った。
「うん、折れてるよ。包帯ってうっとおしいねえ」
そして、そのまま今度は右腕でコーヒーを飲みだし、さらに右腕で携帯メールを打ち始めた藪ちゃん。その動きはいつもと同じく超機敏。とても骨折している人には見えず、しまいにゃあ包帯をした右腕でトイレのドアまで開けてる!
いやはや、すごいオバちゃんである。この人にとっての骨折は僕にとっての擦り傷みたいなものなのか。プロの格闘家ってすげえな。みんなこんな感じなのかな?
次回更新は、9月19日(金)です!お楽しみに!!









