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山田隆道のにわかでゴメンよ!

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第9回「キック少女物語(1)」

 以前、某芸能プロダクションのマネージャーをしている知人と食事をしたとき、その席にMという新人グラビアアイドルも同席していた。友人曰く、Mは華奢で小柄な外見に似合わず、かなりの格闘技好きらしく、自身も中学生の頃からキックボクシングのジムに通っているという。ちなみに年齢は20歳。見た感じはいかにも男好きしそうな典型的なアイドルフェイスで、性格も社交的だし、礼儀もきちんとしている。ただ、ちょっと全体的におっとりしているというか、いわゆるホンワカ癒し系のため、頭はあまり良くなさそうに見える女の子だった。

  僕はMの外見とキックボクシングのイメージがまったく結びつかなかったため、最初は驚きを隠せず、「へえ、そんな風には見えないけどなあ!」と興味津々になっていた。しかし、それが途中から「あれ、ちょっとおかしいぞ?」と思いだしたわけで、その理由は次のセリフたちがきっかけである。

「Mは小柄だけど強いですよ!ローキックでバットも折れますからね!」

「Mのキック歴は7年ですからね。そんじょそこらの女子キックボクサーより強いかもしれませんよ!」

「Mはアイドル界の魔娑斗になれる逸材なんですよ!これからガンガン売り出していきますよ!!」

 このように知人のマネージャーはMのキックボクシングの実力を必死にアピール。しかし、その間、肝心のMはニコニコ笑顔を見せるだけで一向に口を開かない。そう、キックに関するセールストークは全部マネージャー発信であり、M本人の口からキックの話をすることは一切ないのだ。

  僕は一気に懐疑的になった。いや、ほぼ完全に確信した。
 こりゃ、Mはキックやってねえな。いや、ちょっとはかじったことあるかもしれないけど、キック歴7年とかバット折れるとか、そういうのはかなりオーバーに言ってるな。きっとアイドル活動をしていく上でのプロモーション戦略の一つなんだろうな……。
  経験上、この手の僕のカンは大体あたる。おそらくMはマネージャーの戦略にかなり踊らされている「弱いウォーズマン」みたいな女の子なんだろう。

 基本的に僕は性格がSである。肉体的にはド級のMなのだが、こういう突っ込みどころ満載の女の子を見つけると、途端に意地悪な質問をしたくなる。僕はキックについて何も語らない公称キック歴7年のMに嫌な質問をぶつけた。

僕 「好きなキックボクサーは誰?」

M 「いや、特には……」

マネージャー「(割って入って)こいつ立嶋が好きなんですよ!」

僕 「古いですね!(Mに)立嶋のどこが好きなの?」

M 「どこっていうか……」

マネージャー「(割って入って)キャラですね!」

僕 「キャラ!?まあ、確かにカリスマ性ありましたけど、(Mに)でも、女の子だったら魔娑斗とかには興味ないの?」

M 「いや、キックなんで」

僕 「はあ?いや、だから魔娑斗って……」

マネージャー「(割って入って)こいつK1には興味ないんです」

僕 「えっ、でもキック好きなんでしょ!?」

M 「(笑顔で)はい」

マネージャー「(Mに)やっぱ立嶋だよな」

M 「(笑顔で)はい」

僕 「いや、時代が違う気が……。じゃあ、JGIRLSとかは興味ないの?」

マネージャー「なんすか、それ????」

  正直、ここまでとは思わなかった。こりゃ、Mだけじゃなくマネージャーも本当はよくわかってなくて、キックボクシングって言ってるはずだ。この後も散々色んな質問をしたけど、Mが喋ろうとすると全部マネージャーが割って入ってくるし、たまにMが発言しても完全にマネージャーに言わされてる感じ。なんだか船場吉兆の記者会見みたいだ。

 いずれにせよ、このバカコンビはキックボクシングを使って、一体何をやろうとしているのか? その先に何か具体的なヴィジョンはあるのか? その全貌と結末は、とても一回じゃ書ききれないので、次回へと続く。






次回更新は、8月8日(金)です!お楽しみに!!

PROFILE

山田隆道(やまだ たかみち)



ちょっと格闘技が好きな漫画原作家。
そこまでマニアではないと言いつつも、渡辺啓とのユニット「あおい」として 女子総合格闘技をテーマにした漫画「彼女色の彼女」(幻冬舎)を発表。
他の主な漫画作品に「リサーチャー」「借金カノジョ」(いずれも幻冬舎)がある。
また、様々な雑誌で連載コラムも多数抱えており、シレっと格闘技について語ったりしている。

詳しい情報や近況は
オフィシャルブログで!




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