最近、YOUTUBEでよく格闘技を観ている。まったく便利な世の中になったもので、以前のように試合のテレビ中継を見逃してしまったからといって落胆したり、焦って友達に録画したビデオやDVDを貸してもらう必要もない。試合後、数日たてばほぼ全試合の映像がYOUTUBEにアップされているからだ。
そんなYOUTUBEの格闘技であるが、昔の映像から最近の映像まで色んな試合や煽りVを観ていると、ふと気づいたことがある。それは同じ格闘家の中にもYOUTUBEが似合う選手とそうでない選手がいることだ。僕の中では前者の代表が五味隆典、後者の代表が桜庭和志だ。勿論、どちらも大好きな選手なのだが、なぜかYOUTUBEの小さな画面の中では桜庭よりも五味のほうが数段輝いて見える。桜庭はYOUTUBEで見ると、どうも通常時より幾分か色褪せて見えてしまうのだ。
先に五味隆典を片付けておく。YOUTUBEで五味の映像を検索すると、PRIDE時代や修斗時代は勿論、コンテンダーズでの宇野薫戦(グラップリングマッチ)など、結構貴重な試合を楽しむことができる。五味ファンにしてみれば、どれもハズレがない。どの試合の五味も僕がイメージしている五味の実像とほぼ同じか、もしくはそれに近い、まさに火の玉ボーイな姿を楽しむことができるのだ。
一方の桜庭和志はYOUTUBEで昔の映像を観ると、どうもリアルタイムで観ていた頃に味わった興奮とか感動とか、そういった鳥肌が立つような感覚を覚えない。桜庭に対する妄想が膨らみすぎて、いざ映像で確認すると大体拍子抜けを食らってしまうのだ。そう考えると、桜庭ってファンが妄想を膨らませて、その時々の人間ドラマのシナリオを頭の中で描いて、そういった脳内ドラマを頭に抱えたままリアルタイムで試合を観てこそ興奮できる選手なのかもしれない。桜庭はYOUTUBEみたいな過去の記憶を記録として残しておくメディアに向いていない。妄想してナンボの選手なのだろう。
そう言えば先日、ある野球専門雑誌の編集者と野茂英雄について話したのだが、野茂もそういう桜庭的な要素がある選手だった。編集者と一致した意見は「野茂って静止画、つまり、スチール写真がかっこいい選手だよね」ってことである。一方でイチローや松坂はムービー、つまり動いてナンボの選手。イチローの芸術的な打撃やレーザービーム、松坂の剛速球や高速スライダーはビデオで何度観ても凄いって思うし、とにかくグラウンドで躍動する姿が圧巻。けど、野茂は動いている姿より、グラウンドで佇んでいる写真、マウンドで腕を振りかぶっている写真が何とも言えずかっこいい。ましてやモノクロ写真になってくると余計鳥肌が立つ。まるで歴史上の人物みたい。僕らは歴史上の偉人たちを色褪せた写真でしか知ることはできないし、その写真から様々なドラマを妄想するが、野茂や桜庭にもそういった歴史の英雄的な匂いを感じるのだ。
今後、記録メディアがますます進歩していくと、こういう選手ってどんどん減ってくると思う。よく高齢の人が「力道山は凄かった」とか「金田正一は160キロを超えるストレートを投げていた」といった伝説じみた話をするが、記録メディアの進歩によって、こういう伝説がきっちり事実として記録されてしまうからだ。つまり、「YOUTUBEで確認したけど力道山ってそんなにたいしたことないじゃん」とか「金田ってどう見ても140キロぐらいしか出てなかったでしょ」というような身も蓋もない現実論が我々の妄想に水をさすようになると思うのだ。
桜庭の全盛期を知らない若い人たちがYOUTUBEで桜庭の試合を観て、「たいしたことないじゃん」って思ったとしたら、正直すごく切ない。僕らの記憶の中で桜庭の妄想はどんどん膨らみ、それはそれで僕らとしてはめちゃくちゃ心地良いのだから、その記憶をわざわざ破壊しないでほしいって思う。だから、僕は今後、YOUTUBEで桜庭の試合を観ないようにしようと思っている。
けど、その一方で五味は凄いな。YOUTUBEで観てもまったく色褪せないもん。「マッハ戦の五味はすごかったなぁ」とか思い出して、今一度YOUTUBEで観てもリアルタイムの頃と同じような強さを感じた。まあ、まだそんなに昔じゃないというのもあるけど、五味の場合、語られてナンボの選手じゃなく、試合を観てナンボの選手だと思うのだ。
今度の戦極にも期待しています!
次回更新は、8月29日(金)です!お楽しみに!!









