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山田隆道のにわかでゴメンよ!

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第10回「キック少女物語(2)」

 自称・キックボクシング歴7年の新人グラビアアイドルM(20)。しかし、僕が色々と突っ込んだ結果、明らかにキックなんかやったことのない少女であることは一目瞭然。彼女のマネージャーが何を血迷ったのかMを「キックボクシングアイドル」としてプロモーションしていこうと見切り発車で思いたったのだろう。
  Mとの出会いから数日後、彼女のマネージャーから僕の携帯に電話がかかってきた。
「今度、Mが出演するトークイベントがあるんで、良かったら遊びに来てくださいよ」
 最初、僕は忙しかったこともあって断ろうとした。しかし、マネージャーが「ファンの前でバット折りも披露させるんで、一見の価値ありですよ!」とアピールした瞬間、僕は思わず「行きます!」と力強く返事してしまった。
  だって、バット折りだよ?それは絶対見てみたいじゃん。明らかにキックなんかやったことのない女の子がどうやってファンの前でバットなんか折るんだ?ってか、本当にそんなことできるのか?Mは身長150㎝ぐらいの華奢な素人少女だぞ?

 イベント当日。僕は現場に着くなり、早速、Mのマネージャーに電話した。すると、マネージャーが「まだ時間あるから楽屋に遊びに来てくださいよ!」と言うので、お言葉に甘えることに。しかし、いざ入ってみると楽屋にはマネージャーはおらず、Mが一人で待機していた。どうやらマネージャーはトイレに行っているようだった。

 「調子はどう?バット折るなんてすごいね」

 僕は思い切って、Mに話しかけてみた。どうしてもバット折りのことが気になって仕方なかったからだ。すると、Mはしばらく黙った後、僕に小さな声でこう言った。

「バット……無理です……」

 やっぱり!予感的中!!

「無理って、どういうこと?」

「……バット折れないんです」

「キックボクシングやってたんじゃないの?」

「それはそうですけど……」

「キックはやってたけどバットは無理ってこと?」

「いや……」

  Mは言葉を濁して、ごにょごにょしだした。僕はそんなMを見て、ちょっと楽しくなってきた。多分、もう少し突っ込んだら、色々とボロを出しそうだ。

「前、キックボクシングを7年もやってたって言ってたじゃん。小さいけど強いって言ってたじゃん。立嶋篤史が好きなんでしょ?JGIRLSは知らないみたいだけど」

 すると、明らかに困惑した表情になるM。小さな溜息をついた後、ついに正直な胸の内を僕に吐露しだしたのだ。

  以下、Mの告白。

M 「実は全部嘘なんです。本当は高校生の頃、ダイエットでちょっとだけキックのジムに通ったことがあって、今の事務所に入るときマネージャーが『何か特技はない?』って聞いてきたから、つい『キックをやってました』って言っちゃったんです」

僕 「……なるほど。まあ、ありがちだよね」

M 「そしたらマネージャーが超食いついてきて、そんな小さい体でキックボクシングができるなんて凄いから、それを大々的に売り出そうってノリノリになって……」

僕 「訂正しなかったの?本当はボクササイズみたいなもんですって」

M 「それを言ったら、事務所に入れなくなるって思ったから言えませんでした。マネージャーは『特技の一つもないアイドルはいらない』って言う人だから」

僕 「じゃあキック歴7年とか立嶋好きとかバット折れるとかはマネージャーが勝手に作ったの?」

M 「はい……。でも、バットは私が……」

僕 「折れるって言っちゃったの!?」

M 「バットぐらい折れるよねって聞かれたとき、最初は無理って言ったんですけど、マネージャーさんが『乾いたバットに切れ目をつけたら大丈夫。思い切り蹴ったら案外折れるよ!』って言うから……」

僕 「(溜息)」

謎はすべて解けた。僕が想像していた通り、いや、正直それ以上にMはマネージャーに踊らされていた。ちなみに楽屋にはバットが三本も置いてあった。調べてみると全部、ヒビが入っている。けど、結構堅いぞ、これ。本当に大丈夫なのか?次回、いよいよMはバット折りに挑むことになるのだが……。






次回更新は、8月15日(金)です!お楽しみに!!

PROFILE

山田隆道(やまだ たかみち)



ちょっと格闘技が好きな漫画原作家。
そこまでマニアではないと言いつつも、渡辺啓とのユニット「あおい」として 女子総合格闘技をテーマにした漫画「彼女色の彼女」(幻冬舎)を発表。
他の主な漫画作品に「リサーチャー」「借金カノジョ」(いずれも幻冬舎)がある。
また、様々な雑誌で連載コラムも多数抱えており、シレっと格闘技について語ったりしている。

詳しい情報や近況は
オフィシャルブログで!




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