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山田隆道のにわかでゴメンよ!

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第1回 「人生初の総合スパーで大惨事!」

 今の僕の仕事は漫画の原作を書くことだ。まあ、他にも雑誌などでちょこちょことコラムやエッセイの連載を持ってたりするので時々ライターと間違えられたりするけど、基本的には漫画の原作家なわけである。(昔は色んなことやってたが)
 だから、正直、格闘技とはまったく関係ない。団体や格闘技マスコミの関係者でもないし、ゆでたまご先生ほど漫画界で偉いわけでもない。ぶっちゃけ、なんでこんな格闘技専門サイトに顔を出しているんだって感じなのである。

 しかし、多分、僕はそこそこのにわか格闘技ファンではあるわけで、テレビ中継は地上波や衛星波を問わず当然のように観るし、実際に会場に足を運んだりもする。専門雑誌も定期購読してるし、何気に格闘技バーの常連だったりもする。や、もしかしたら完全にマニアなのか?いや、そんなことはない。やっぱただのにわかファンだと思う。

 さて、そんな僕だが自分の作品の中に女子総合格闘技をテーマにした「彼女色の彼女」という漫画がある。女子総合格闘技スマックガールの実名を使わせてもらい、主人公の名前はユカ(辻結花から拝借)。さらに他の登場人物も藪下久恵や高橋惠、藤井洋子、渡辺さとこなど実在の選手をもじった名前ばかり。大室や真武、虎島なんてマニアックな名前まで使ってる。まあ、格闘技好きが高じて生まれた漫画ってわけだ。(立派なマニア?)

 で、今から二年ほど前のことである。
 僕はこの漫画の取材のため、とある総合格闘技ジムを訪問したのだが、そこで人生初の格闘技体験をさせてもらった。最初はオープンフィンガーグローブをつけただけでテンションがあがり、サンドバッグにパンチやキックを叩き込むだけで勝手に格闘家気分になっていたのだが、周囲から「うまい!」なんて煽てられてると段々調子乗ってきて、挙句の果てには練習生の一人と軽いスパーリングをすることになったのだ。
 5分1ラウンドの総合ルール。さすがにヘッドギアはつけさせてもらったが、今まで愛猫の池乃くんに腕十字を仕掛けたことぐらいしか格闘技経験がない僕にしてみればかなり無謀な挑戦である。しかし、その時は散々周囲から煽てられていたので気分はすっかり桜庭や五味だったわけだ。
 
 というわけでスパーリングが始まったのだが、やってみて秒殺で気づいたことは「とにかく体力がない!」ってこと。酒やタバコに溺れ、お腹も立派なゆるキャラになってしまった僕だけに開始1分ぐらいで早くも息切れ!呼吸は乱れ、全身からスプリンクラーのように脂汗が噴出し、顔面も死ぬ前みたいに蒼白!しかも、3分が経過したところぐらいでなぜか強烈な腹痛に襲われ、激しい便意までもよおしてしまった!!

 ちなみに、もともと僕は子供の頃からお腹が弱い。これは父の遺伝なのだが、ちょっとした刺激でやたらと大腸が悲鳴を挙げてしまう情けない体質の持ち主。小学校の頃なんて給食のカレーを食べただけで脱糞してしまい、それから数年間、ほぼ毎日のようにアスパラを筆箱に入れられるというわけのわからないイジメにあったものだ。
 だから、このスパーも便意をもよおした時点で人生で最も過酷な試練に変貌。僕は激しい腹痛と便意、そして対戦相手からの容赦ない攻撃にも耐えながら、なんとか低い姿勢を維持して終了のゴングを待ち続けたのだ。

「おい、どうした!?タックル行くなら行けよ!!」

 リングの外でチョコボール向井に似たジムのトレーナーが叫んだ。勿論、僕はタックルがしたくて低い姿勢になっているわけではない。ただ、ウンコを我慢しているだけだ。

「さあ、もっと打ってきていいんですよ!」

 対戦相手も赤いマウスピースを見せながら僕を挑発した。ちなみに彼は石黒賢を百発ぐらい殴ったような顔をしており、両脇から稲中の田辺ばりに強烈な異臭を放っている。

「ちょっとタンマ。お腹痛いんです……」

 僕はいよいよ我慢できなくなり、ギブアップ宣言をした。けど、大きな声を出したら脱糞しそうだったので、ものすごく小声で呟いてしまい、誰にも聞こえていない。
 おまけに次の瞬間、僕はタックルを食らい、完全にテイクダウンされてしまった。腹痛と便意、さらには強烈な脇臭。もしも本当に地獄があったら、こんな感じなんだろうなあって思うぐらいの三重苦。僕はとにかく秋山戦の桜庭ばりに「ストップ!ストップ!」と小声で呟きながら地獄に耐えた。子供の頃の想い出とかが一気に蘇ってきた。

 しかし、両脇に爆弾を抱えた対戦相手は完全に面白がっていた。僕の脱糞戦線に異常があることにも気づかず、ただ格闘技好きの素人のオッサンをそれなりに楽しませてやろうってな感じで、容赦なく僕のデリケートな腹部に軽いパウンドを打ち下ろしてきたのだ。

「あ、ダメ……」

 さすがにこの状況でボディへのパウンドはリーサルウェポン!

「いや……ああ、あ、あ……」

 僕は強引にベッドに押し倒された女のような声を漏らし、その直後、リング上で繰り広げられた壮絶な闘いに志半ばで終焉を告げられてしまった。

 数分後、僕はジムの関係者に深々と頭を下げ、シャワールームでパンツを洗った。ジムの皆様は「終わったことはしょうがないけど、次からは漏らす前にちゃんと言ってくださいね」と優しくフォローしてくれたが、目は笑っていなかった。(当たり前!)

 まあ、いきなり汚い話で申し訳ないが、こうして僕の人生初の総合スパーは幕を閉じたのだ。公式結果は1ラウンド4分23秒TKO負け。フィニッシュホールドはパウンド連打からの脱糞である。(もう二度とやらん!)。

PROFILE

山田隆道(やまだ たかみち)



ちょっと格闘技が好きな漫画原作家。
そこまでマニアではないと言いつつも、渡辺啓とのユニット「あおい」として 女子総合格闘技をテーマにした漫画「彼女色の彼女」(幻冬舎)を発表。
他の主な漫画作品に「リサーチャー」「借金カノジョ」(いずれも幻冬舎)がある。
また、様々な雑誌で連載コラムも多数抱えており、シレっと格闘技について語ったりしている。

詳しい情報や近況は
オフィシャルブログで!




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